晴れはどこだ!!!!!

ずーーーーーと曇りで小雨がぱらついて。
どうなんだ!!アンカレジ!!
一切写真は撮れません!
モチベーションは下がる一方。
それでもやらなきゃいけないことは
沢山あるわけで。
次回の準備、自分たちの荷物の手配。
情報の収集、道具のメンテナンス。
なんやらかんやら。
はー、しかしもっとスムーズに
いろんな事がいかないのかしら。
ちょっとうんざり気味の今日ですが、
おかげでまめにブログにアップできます。
とりあえず、今日は運転免許の仮免をゲット!
一日かけた甲斐があった
これであとは行動の実技テストをこなせば、
本免許取得になり、
来期に車を買う時に車に掛ける保険が
手に入ります。
一歩前進でも、直接的に写真にはあんまり
関係しません。でもこれが
ないと写真が撮れないのです。
”いかなる事があろうとも自分の情熱を維持して
写真を撮りにフィールドにでる”
これがまず最低限にしなければならない事。
これがあって初めてそれから技量や感性の
勝負になります。
ボーイ!明日は晴れてくれよ!!

Bansyuu バンシュー

天気の悪い日々が続き、ずっと雨の日々が続いています。
おかげで、冷気が地面の上にまるでたまっているかのように
足下から冷えてくる日々です。

こんな事ばかり、書いていると暗いようですが、気分は上々です。
この晩秋の時期の薄暗く曇った肌寒い秋が、
やがてやってくる冬を予感させてくれるとともに、
植物も動物も全く違う季節へと切り替わっていく様子が、
目には見えないけれど空気に漂っていて、
言葉にしたり、写真では表現できないけれど、
静かに時間が流れていく事を感じさせてくれる。
さて、前にサーモンの骨を撮りに行った湖に
また撮影に出かけました。
今回は、産卵後打ち上げられた鮭の死骸を撮影する事です。
サーモンの旅の重要なパートになります。
彼らの命は終わりますが、そこからまたたくさんの
命へと目には見えない形でつながっていく
スタートにあたる部分です。
秋の雰囲気の漂う
湖への歩きなれたトレイルを、
静かに歩く。

歩いているとトレイルの上にラズベリーアイスクリームが!!

そんなわけない。
クマの糞。
クマの糞はクマをさけて行動する上では一番の目安になる。
なぜなら、雑食でいろいろな物を食べるクマが今このエリアで
何を重点的に食べているかが一目でわかる。
つまり、自分がこれから行く所に糞の中にあったそれらが
あるという事は、クマがその場所を利用する可能性が
高く存在しているという事だ。
さて、このラズベリーアイスクリームはずばり木の実を
食べている頻度が高そう。
しかし、この時期は湖岸に打ち上げられたサーモンの死骸を
食べる事もあるので一応用心はしておく必要があります。

やがて湖岸にたどり着くと落ち葉に混じって
打ち上げられた大量のサーモンの死骸が異臭を放っていた。
この腐敗臭は浜辺に近づく前にすでに森の中まで
匂いが漂っていた。
つまり、クマにとっては刺激的で魅力的な匂いがする
場所でこれから撮影する事になる。
周りの様子に注意しながらも撮影開始。
深紅の体をしていたサーモンはまるで
すべてが抜け去ってしまったかのような
白い色に変わっていた。

その様子に満足しながら撮っていると
子供の集団が・・・・・・

以前にも撮影していると子供が遠足にやって来たが、
今回も当たったようだ。
しかし、今回はアラスカの子供達のタフさをみた。
鮭の腐敗臭で満ちた湖岸でなんのためらいもなく、
ランチを食べ、お菓子を楽しんでいた。
すごいなあ、日本だったら絶対に
子供が引いている状況なのに。
再び撮影に集中して黙々とシャッターを切る。
一息つくと、すかさずヨメが近づいてきて一言。
「さっき怖かったんだけど」
「え、何が?」
「子供が遊ぶ中、一人黙々と鮭の死体の写真を撮りながら
ふっと顔を上げて何も言わずに遠くを見ながら、
にやーっと笑ったんだよね」
「え、そんな事してた?」
「うんしてた、気持ち悪かった」
自分では「いい仕事したなー」
と感慨にふけった覚えはあるけど
にやーっと笑っていたとは。
やがて子供達は引率の大人達につれられて、
引き上げて行った。
そのまま鮭の死骸を撮り続けていると
ふと顔を上げた時に100メートルほど向こうの湖岸を
クマがのそのそ歩いていた。

(写真をクリックすると拡大して見る事が出来ますが、拡大しても
ほとんど判らないかもしれません)
おー、やっぱりいるなあ。
なんとなく来るだろうなと思っていたので、
驚きもしなかった。
なぜならクマの餌場にいるのだから。
視界の開けたオープンな場所で風が強くこちらの様子にも
気づいていない。
この状況下であれば、近づく前に声をかけてクマに気がつかせて
クマが逃げられる選択肢をクマに用意してあげるのが上策。
と、言っても撮影できる状況なので、少しの欲がでて
様子をしっかり見ながらシャッターを切る。

観察していると、まだ打ち上げられたサーモンには手を出さず、
力なく波打ち際を漂っているサーモンを捉えて食べ、のんびりと歩いてくる。
わずかながらもおいしい食事にこだわっているようだ。
このあたりで気をつかせてやれば、こちらもクマが何か行動した時には
余裕を持って対処できるなという距離で
「ヘイ!ベアー!!」
とふたりで大きく手を振りながら、
大声で何度も呼びかけた。
すると気がつかないのかそのまま歩いてきた。
さらに呼びかけ続けると、何かある事に気がついたクマは
立ち上がり、こちらが人間である事に気がつくと
ゆったりと体をひるがえして、森の中に消えた。
自然な状態に生活しているクマの対応だった。
予想していた通りに事が運び、人を避け、
そしてクマは森の中に消えた。

クマが森に消え、サーモンの撮影は満足できる内容だったので、
引き返す事にした。
そのままクマに呼びかけ続けながら、急に遭遇した時のために
クマスプレーは抜いたまま歩いた。
もちろんその後クマと会う事はなく無事、湖を後にした。
その後、アンカレジへ移動。
ちなみに移動中のBGMはフジ子ヘミングの「ラ・カンパネラ」
秋の静かな雰囲気にピアノの音がよく合う。
アラスカのスケールの大きな風景に対してもまったく
違和感の感じないすばらしい演奏だ。

この後数日間はムースの撮影に取りかかります。
問題はフィルムが足りないこと。
残り時間は少ないけれど、1秒でも長くフィールドで過ごし、
シャッターを切る事にこだわりたい。
さーて、困った。

さあて、10月になりました。PART2

サーモンの採卵調査の後、すぐに今度は
ムースの研究施設へ。
ここは町から隔離された巨大なフェンスの中に
ムースを飼い、そこからデータを集め研究しています。
以前からこの施設は気になっていたのだけれど、
一般非公開。
当然、コネクションも実力もない人間にとっては想像が
膨らむばかり。
「大きな野生動物の学会があるので、
常駐の動物学者たちはアンカレジまで出張する。
その期間、フェンス内の動物に餌をやる事。」
これが今回の撮影の許可をもらうための条件でした。
条件を書くと堅苦しいが、つまりは
「行くんだったら、餌もやっておいてよ」
野生動物写真家として、人に飼育されている状態の
動物を被写体としては選ぶ気にはならなかったけれど、
フィールドではなかなか難しい、いろいろな観察が
できれば、そこから作品につながるイメージを得られるかもしれない。

今回の狙いはずばりその一点。
何はともあれ大きな期待を胸に
ゲートをくぐり、フェンス内に入ります。

調査研究施設と言っても、とにかく規模が日本と桁が違う。
まずフェンスの大きさ。
巨大と書いたが、フェンスの大きさが1マイル×1マイルの四角形
をフェンスで囲み、ほとんど自然の状態で飼育している。
そしてこのフェンスが4つほど隣接して建てられている。
一応フェンスで保護されていても中にクロクマが住み着いていたり
ムースが死ねば、ブラウンベアが入り込んで死体を綺麗に平らげるし、
一応餌箱はあるものの、ほとんどの個体は自然にある植物を食べて
生活している。
そんな状況で繁殖期を迎えて粗野で乱暴になっている今のムースに
近づけば、当然突進され大怪我を負いかねない。

ムースと同時にカリブー(トナカイ)も研究対象として
飼育されている。



そして、ムース。
オスとメスを分けてフェンスに入れてあるのだが、
その両方のフェンスが隣接する部分には
オスに惹かれてメスがやってくる。

じっくりと観察。
とにかくじっくりと。

じっくり、じっくり

おいおい
ここまで近づけたのも、後で話を聞いたところ、
母親が交通事故で死んだ個体を人工保育で育てた
個体だった上に物理的にフェンスによって遮断されていたから。
それにしても日常的にムースを観察していても
この距離に近づく事はまずないので、
何より安心と判っていても怖い。
(アラスカではクマと同じように危険な動物として
注意されている。時々、人がムースに突進され、
倒された後、前足で踏みつけられて殺されている。)
しかし、ここまで近づいたおかげで、普段にはあり得ないが
オスの繁殖期独特の匂いを感じる事が出来た。
この強烈な匂いでメスは体内での繁殖の準備を促進させる。
ムースの繁殖の重要な鍵になる物は匂いだ。
強烈な匂いはメスを惹きつけるだけでなく、風に乗って
まるで呼ぶかのごとく他のオスをも惹きつける。

天気は悪かったがとにかく全く写真を撮る事は考えず、
車の中から、そして時にはフェンス越しに
ムースを観察し続けた。
繁殖期。
1頭の雄と半日を過ごす。
車の窓を開けたままにしていると
雨に濡れた落ち葉の匂いの中に
ときおり強烈なムースの匂いが漂ってくる。
森に降る雨音の中にメスを呼ぶオスの声だけが
響き、それに惹かれメスが姿を現す。
フェンスに阻まれ、彼らの思いが実る事はない。
しかし、まるでそんな事を意に介さない彼らから
生き物の持つ生命の力を感じた。
エネルギッシュなサーモンの撮影から
全く違うムース撮影のテンポへの
切り替えもきっとフィットできるだろう。

つかれて寝ているヨメに興味をもつムース

さあて、10月になりました。

アラスカも今日から10月です。
一昨日から空気の感じが変わり、北国独特の黄葉が終わって、
雪が降り始めるまでの秋と冬のわずかな隙間のような、
雰囲気が空気に漂っています。
じりじりと冬が押しあがってきて
空気の冷え込みがキリッとし始めました。
この1週間は動物の調査に同行し、
サーモンとムースの調査に参加しました。
まずは知り合いの動物学者にサーモンの採卵調査に誘われ、
普段のフィールドにしている川の上流にある湖で
産卵しはじめたベニザケを観察に出かけました。

通常サーモンの産卵というと川がイメージされますが、
アラスカのサーモンは湖でも産卵します。
サーモンの旅を写真を使ってまとめ上げる事が
目的なのですが、
今回の湖での産卵を観察できる事は
写真を撮る事に対して大きなプラスになります。
(ブラックベアを撮影するために待っていた川の上流にある
湖です。)
作業は2日間に分けられていて、まずは湖の浅い岸に産卵のために集まって
きたサーモンを1日目に捕獲してオス・メスに分けて置き、
2日目に卵と精子を取ります。

網を使ってサーモンを囲い込み、



そこから1匹ずつ手で網に絡まったサーモンを取り外して
オス・メス分けてネットに投げ込みます。
このとき、絡まっているのはサーモンの鋭い歯!
川に入ったサーモンは産卵に向けて体色が変わるのと同時に、
顔の形も変わり顎が湾曲してカーブを描き、大きく歯がせり出してきます。

網からはずす時は歯に網が複雑に絡み合っている上、サーモンが暴れるので
手を怪我をしないようにする事と、無理にはずしてサーモンを殺さないようにする事の両方に気をつけなければなりません。

1日中水につかっていたおかげでしっかり芯まで
冷えましたが、とりあえず予定の数まで達したので
1日目は無事終了!!
2日目は晴天!


いよいよ採卵に取りかかりますが、ここからはプロの仕事
手慣れた彼らは役割分担し、あっというまにサーモンから
採卵し、パックしてクーラーにしまっていきます。

まるでフィッシュマーケット



気がつくとプロの中にヨメの姿が・・・

アラスカのフィールドワーカーに混じってもすっかり
遜色のない見事な働きぶり!!
それに対して、この写真の充実ぶりをみてもらえれば、
僕のボランティアワーカーとしての貢献度も
一目でまるわかり!!
2日目晴れてくれたおかげで、いくつかのイメージができたので、
来年は水中カメラを持参して撮影に望みたいと思っています。
薄いグリーンの水中を真っ赤なサーモンが
産卵する様子は想像するだけで、
フィルムの巻き上げ音が聞こえてきそうです。

採卵調査もクマが現れる事もなく無事終了。
2日間の作業でじっくりとサーモンを観察し、
また新たな撮影フィールドを知った事でこれからの
撮影に大きなプラスになりました。

Camper

アラスカの秋もいよいよ深まり、
冬を目前に控えた物寂しい風が吹いています。
撮影に対する自分のリズムも、夏のエネルギッシュなリズムでは
捉えきれない秋の静かなテンポを前に、少しずつ
スローにシフトしています。
山の頂上がパウダーシュガーを振りまいたように
白く色を変え、黄葉の色の山肌と共存している。
まるで、その様子は秋と冬が同居している今の季節を表している
ようだ。

これからの季節に備えてレンタカーをアップグレードした。
寒さに備えてもあるが、何より夜露に濡れたテントをたたむ手間も省けるし、
悪天候でも料理をする事が出来る。


これはピックアップトラックにキャンピングカーのようなユニットを
積んだ物で、こちらの動物写真家がよく使っている。
中にはベッドルーム・キッチン・シャワー・トイレ・冷蔵庫が
コンパクトに収納されている。




およそ野外で望める限りの快適さがこのキャンパーには積み込まれている。
この快適な環境は肉体的ストレスをかなり軽減してくれる。
しかし、被写体が動物である以上、毎日テントに泊まっていた日々は
ある意味で動物の生活に近かった。
季節の微妙な変化や太陽の移り変わりを感じる事が出来た。
肉体的なストレスの軽減と感覚の鈍化。
どちらが大きく撮影を左右するのか?
写真にはその人があらわれるとよく言われる。
その言葉には嘘はないと思うが、
その写真を撮った人の人間性はあらわれない。
その写真を撮った人の被写体に対するその人の感性が
表現されるだけだと最近、感じるようになった。
快適な生活が自分の写真に何をもたらすのか。
でも心配はいらないかもしれない。
借りる時に念を押された。
「水が凍るかもしれないけど大丈夫?」
快適なのは今だけなのかもしれない。

インスパイア!!

inspire
1 〈人を〉奮い立たせる;〈人を〉刺激して(…する)気にさせる((to do));〈人を〉促して(…を)する気にさせる((to …))
“Yahoo!辞書より”


やはりクマですか?
木彫りといえば。
やはり木彫りですか?
クマといえば。
これはもはやお土産業界の常識なのでしょうか?
インターナショナルな”月刊お土産”とかいう名前の雑誌があるのでしょうか?
そこでクマの木彫りが紹介されたとか?
まさかアラスカに来てまで木彫りのクマを見るとは思わなかった。
このまま行くと将棋の王将のコマが登場するのも時間の問題か!?
ちなみに機材にカモフラのテープを巻いてみました。


追加で頼んでおいたフィルムが40本届きました。
フィルムが足りない事はいい事です。
・・・・たぶんね。
さーて、残り1ヶ月アラスカの短い秋に全力で挑みます!

Denali National Park

デナリ国立公園に撮影に行って来ました。
この国立公園は近年人気が鰻登りに上昇し、
デナリ山(マッキンレー)の見える
キャンプグラウンド・ワンダーレイクは特に人気が高く、
事前の予約が必ず必要なほどとても人気があります。
今回は誘ってくれた友人のおかけで4泊5日の日程で
このキャンプグラウンドに滞在しました。
今回の撮影目的はムースとマッキンレーの風景の二つ。
ただし、どちらも天候次第なので特に天気の変わりやすい
このエリアでは運がかなりの割合を握っている事になります。
どの場所でもきっちり時間をかけて撮っていくのが
僕のスタイルなので、今回の予定は5日間ほどしか
滞在できない上、運にかなり左右される場所なので、
まあ、のんびりとアラスカを楽しもうと。
いつもはどちらかというと、ストイックな事が多いのですが、
たまには写真を第一優先事項から、第二優先事項に
移して楽しむ事にしました。

とりあえず、今回のデナリ国立公園は公園の中心部に一般車の乗り入れが
規制されているので、以前借りていた車から、
コストの安い車に切り替え、公園の入り口に駐車しておく事に
しました。上の写真の車になりました。
「金」
そう、これはシャンパンゴールドなんていう
おしゃれな名前ではなく、金・もしくはゴールドです。
しかし、見た目とは裏腹にエンジンの調子はよく
ぐいぐいとはしります。
そこで、この車に日本人として、
「金閣寺 Kinkakuji」
とよぶことにしました。
「リッチな日本人が選ぶ車はゴールドじゃないとね」
「レンタカーを塗り直してやったよ」
とか友人にはジョークのネタになりました。
※今回の撮影にはデジカメを持っていかなかったので、
公園内での写真はありません。
ただし、傑作が撮れました!!


ビジターセンターの展示物ですが・・・・・・・
撮影は5日間天気に恵まれ、良い写真も幾つか撮れました。
毎日カメラを背負ってツンドラの丘を越え、池を回って
デナリを見上げながら動物を探しました。
夜空にオーロラを見上げ、月明かりに浮かび上がる
デナリ山を眺めました。
オーロラの写真は現れた時間が短かったので、
撮れませんでしたが・・・・
写真がないのが申し訳ないのですが、
今回のデナリ撮影行は大成功でした。
では最後に公園入口の黄葉写真を。
アラスカは秋です。

飛べない豚は・・・

「飛んできます!」
と言ったまま、何も更新しないとまるで、行方不明になったかのようですが、
無事帰ってきました。
予定していた日は悪天候のため、次の日に順延になりました。

翌日は朝は曇りだったものの、無事昼頃から太陽が雲間からのぞくと、
アラスカの強烈な光が差し込んだ。

アンカレジのメリルフィールド空港(民間専門の空港)で
4人乗りセスナをレンタルし、いざ出発。
ちなみに出発前に使うレンズとカメラ、そして
フィルムを持って、ウェイトを計ってみると、
なんと210ポンドもありました。これはまあ、
僕が重いのもありますが、普段腰痛に悩まされている理由も、
実は持っているカメラ機材がかなり重いのも、
原因の一つなんだなと実感しました。
(飛行機から撮るので、三脚と持参しないレンズの分は含んでいないので、
普段はもっと重い。)
アラスカはタクシー感覚で飛行機を使います。
でも、それに対して日本人の僕の感覚では飛行機はただ、移動手段であって
どちらかというとあまり人がそれに関わっている感覚がない。
「飛行機はたまに落ちるけど、とにかく乗れば無事目的地まで
運んでくれる。」
と、理解していたけど今回小型のセスナに乗った事で、
人が飛行機を操縦して、空を飛ぶという事が
非常によくわかった。

機長自ら、滑走路にアプローチです。

アンカレジを離れ、南に向かって出発です。
今回の目的はいつも撮影しているキーナイの川に集まるサーモンを
空から撮影する事。
いざセスナに乗ってみると、いかにもプカプカと浮いているようで頼りない。
4人乗りの狭い空間がまるで空から糸でつられているかのように
ちょっとした風や微妙な操作に敏感に反応する。
大きなジャンボに乗っていると判らない事だけれど、
やはり飛行機は空を飛んでいるのだ。
やがて、飛んでいる感覚になれてくると
アラスカの広大な景色がパノラマとなって眼前に広がっている。


空からの視点。
今までの自分では見る事が出来なかった世界。
圧倒的に自分の目の前に存在するアラスカの景色。
期待通りの存在感で自分を圧倒するのだが、
そこから感じ取れる満足感とは別にもう一つの
疑問のような感覚が自分の中に浮かんできた。
「自分が普段追いかけている生物の世界をミクロとすると
今自分の目の前にマクロの世界が広がっていて、
このマクロの世界には無数のミクロの命が存在している」
この感覚を表現しようと飛行機からの空撮という手段を選んだものの、
自分の中に今まで蓄積してきた「生物を観察してきた時間」から感じ取った
感覚と今眼前に広がる景色から感じる感覚がリンクしない。
その疑問を抱えたまま飛行機はいつものフィールドの上空に到着。
上空を旋回しながら、撮影を開始した。


思い描いていた通り、河口部分にサーモンがたまり
ターコイズブルーの川に見事なコントラストを描いている。
ねらったポイントの上空を猛スピードで通過する。
「空撮の場合、押し寄せる状況が目の前にただひたすら展開し、
その状況に押し流されることなく冷静に状況に合わせてシャッター
を切り続けなくてはならない」
事前にもらったアドバイスをまさに痛感した。
窓を開け、逆風の中自分の全体重でカメラをとばされないようにしっかりと
カメラをホールドしながら、ズームレンズで正確にフレーミングして
マニュアルでピンを合わせる。
そして一度の通過に合わせて、フィルムの残数を考える。
撮りすぎても上空を通過し終わる前にフィルムが終わってしまう。
かといって、フィルムをセーブしていると思わず一瞬の反応に
遅れてしまい、撮り逃がす。

自分の未経験の世界が駆け抜けていったが、
結局最後まで自分の感覚とリンクできぬままだった。
初めての経験としてたくさんの収穫があった。
今回得た経験は次回への忠告として
しっかりと持ち帰りたいと思っている。
そして何より貴重なチャンスを与えてくれた
友人に感謝したい。

「飛べない豚はただの豚だ」
有名なセリフを飛行中に言おうと用意したのだけれど、
撮影中はとてもそんな余裕がなく、
また撮影後も必死にズームアップ、ズームアウトを
繰り返しながらマニュアルでピンを合わせていたおかげで
飛行機に酔ってしまい、帰着する寸前にやっと
思い出して言うのが精一杯でした。

とつぜんですが、飛んできます。

唐突ですが、突然ですが。
明日飛んできます。
空を。
ええ、頭がおかしいわけではありません。
ブッシュパイロットを目指す人と友達になりました。
話の流れでそうなりました。
今日その人と2回目にあって
飛ぶ事が先ほど決まりました。
初飛行です。
本当に飛んできます。
初空撮です。
これで、今まで自分が撮ってきたフィールドを
空から見る事が出来ます。
今年はずっと頭の片隅にあった事が、
こんな形で実現するとは。
時折ある人生のいたずらってやつかもしれません。
すごくたのしみ。

「この辺からぶわーっと上流をみたいですね。」
「このへんからね」
すごく大雑把な打ち合わせ中です。

Salmon Skeltons

いつも、食べ物の話だと突っ込まれそうなので、
たまには撮影の話を。
サーモンの撮影はもうすぐ終わり、ムースに切り替わります。
と先日書きましたが、今日はサーモンの撮影の事について。
ベニザケは川で産卵するものと、湖で産卵するものがいます。
湖で産卵したあとのサーモンは湖の底でゆっくりと腐敗し、
やがて骨だけが湖岸にうちあげられます。
去年撮影したものの、山火事の煙が空を覆っていた影響で、
まったく使い物にならず、今回はその骨の山を
再び撮影に向かいました。
湖までのトレイル(遊歩道)は一部が山火事の被害を前にうけて
森として再生している段階です。


湖の湖岸は、山火事に焼かれ、
川を旅して漂着した倒木がひしめき合っています。


漂着したサーモンの骨たち
サーモンの骨が静かに湖岸に打ち上げられ、
まるでその様子は打ちあげられた倒木たちと重なって
誰も訪れる事のない静かな墓場のようでした。