お金を節約するため、キャンプ場の外に泊まっているぼくらは
ときどき、トイレを借りにキャンプ場に行きます。
ある日、朝ふらふらとヨメと二人でキャンプ場を歩いていると、
2頭の犬が吠えながら近づいてきました。
こちらはみんなと言って良いくらい犬が好きで、
しかも、日本に比べると飼っている犬のサイズがみんな大きいのです。
前に犬を飼っていた事もあったので、
とりあえず彼らは警戒しているだけなんだろうなと思って
吠えていても別にいきなりかみつきそうな雰囲気ではなかったので、
そのまま歩き続けたら、
犬の声を聞きつけて飼い主のおばさんが走ってやってきた。
しかも怒鳴りながら、一発頭を軽くたたいたうえに
首を押さえつけて、こう言いました。
「Shame on you!!」(恥を知りなさい!!)
「Nobody asking you like that!」(誰もこんな事頼んでないでしょ!!)
いやいや、おばさん
犬に恥をしれっていっても、恥の意味じたいわかんないし。
それに知らない人が来たら吠えるのは彼らの仕事じゃないの、
キャンプ場で放し飼いにしたあなたの方がまずいと思うんですけど・・・・
とはとても言えないし、もちろん言わないし。
「Thanks」そういうのが精一杯でした。
ごめんよ、ワンコ。
おまえ悪くないのにね。
月: 2008年8月
Stinky
ええ、匂ってまいりました。
参りました。はい。
もうすぐ、こちらで撮影してから1ヶ月になります。
この期間、ほとんど毎日魚眼レンズで水中を覗いています。
これだけ1本のレンズのみを使っている日々も久しぶりです。
まるで、自分で一番最初に買った55mm F2.8マクロが
嬉しくて、そのレンズだけをずっと使っていた日々のようです。
おかげで、特に癖の強いこのレンズの視界を
なんとなく自分の頭の中にイメージ出来るようになりました。
道具が使えるようになってくると被写体と向き合うシンプルな時間に
なってきます。
今はシャワーを浴びるために移動してきました。
毎日、撮影ばかりしているとついつい、
健康管理がおろそかになりますが、
今日久しぶりに暖かなシャワーを浴びてリフレッシュしました。
今日は良い写真がとれたけれど、でもそのために
長時間水に浸かりすぎて完全に冷え切ってしまい、
スープを飲んでも、食事をとっても
ふるえは止まったけれど、芯まで完全に冷え切っていて
危うく低体温症になってしまうところでした。
こうやって冷え切った体のまま寝てしまう事が
今の生活では一番疲労を蓄積させてしまうので、
風呂に入って暖める事にしました。
シャワーを浴びて綺麗になると、気になるのが
今までの自分の臭い。
洗濯すれば洋服の臭いはとれるけど、
一番困ったのがドライスーツ。
毎回使ってから完全に乾かす事も出来ず、
水に浸かるまでに汗をかいて、水に入ってからは
その汗が冷えて内側がしめったまま、そして生乾きという
これ以上書くと嫌われそうなくらい悪条件が
重なっています。
洗えれば、一番速いけど撮影が続くので、乾かす時間がない。
とりあえず、ファブリーズしておきましたが
どうなることやら。
今日はオフ
今日はむりやりオフにしました。
毎日サケばかりみていて、ちょっと気が滅入ってきたので、
このあたりで気分転換をということで
写真の事はちょっと横に置いて、すこし別の事をすることにしました。
かわいいバンをいろいろと手入れする事にしました。
まずはDMVという運輸局と公安が一緒のような車に関する事を
管轄する部署に行って、
アラスカのライセンスプレートを手に入れ、
これで前オーナーがつけていたプレートを外し、
グッバイ、テキサスです。
それから、友人のガレージを借りて、エンジンオイルの交換と
マフラーのクランプがはずれて、ガラン、ガランとアクセルを踏むたびに
うるさかったのでまずはそれを固定しました。
せっかくその日の朝に久しぶりにシャワーを浴びたのに
車の下に潜って作業するたびにあっという間にホコリまみれになってしまいました。
様子を見に来たヨメに言わせると「運動会の臭いがする」と言われてしまい、
そう言い放った彼女はニンテンドーDSで「シムシティ2」に
はまっていて、毎日せっせと時間を見つけては彼女をまつ市民の為に
さまざまな施策を発表しています。
(スクリーンの反射対策でわざわざサングラスをかけて執務を行うヨメ)
その後さらに、はずれていたバックミラーを固定し、昨日買ってきた素敵な柄の
ラグマットを後部座席にひいて、何となく家のようなものにちょっと近づいたような
そんな気がします。
しかも、造花の花を一本ダッシュボードに飾ってみました。
車とは言え、毎日を過ごす中心に今回はリラックス出来るように、と
ヨメのアイデアです。
ドライスーツにコンディショナーを塗り、カメラのハウジングを綺麗にクリーニングして
バッテリーをいろいろなところで充電して、気が付くと7時をまわっていました。
まあ、のんびりはできなかったけど、いろいろと気になっていた事が
片づいて、これでまた明日から撮影にもどります。
ところで、毎日使っているクーラーボックスと車載冷蔵庫に臭いがついてしまいました。
一つは洗剤の臭いで、一つはメロンの臭いです。
今朝食べたラーメンの炒めた野菜の具はほのかに一瞬だけ、メロンの臭いがします。
まるで、利き酒のようにいつもこの臭いをかぎつけてしまいます。
無駄な部分で食通になってしまったようです。
意外とネットにアクセスできます。
ばたばたと毎日移動してばかりいるけれど、
やはりアラスカの秋は近いようで、今日からガンハンティングが始まり、
そして車から眺める木々の緑が黄色に近づくため少し明るくなった気がします。
なんだかんだと、意外とネットにアクセス出来る便利なアメリカ社会。
今日も朝ゆっくりお休みな奥様を起こすわけにもいかないので、
こっそりキャンプ場の中でパソコンを立ち上げてみると
Wifiでネットに接続出来るではありませんか。
便利になったもんです。
今はSewardという町に移動してきました。
外洋への港町なのだけれど、とても小さな町で、
いまいち暗い雰囲気が漂っているので、実はあまり来る事もなかったのです。
来た理由はこの町の少し北に行ったところで、
Salmonが撮影出来るポイントがあるからです。
この町は自分が初めてアラスカに来た時に
車を借りてアンカレジを飛び出してから、やって来た一つ目の町なので
なんとなくその時の自分の気持ちを、今同じ景色を
見る事でそこかしこに思い出します。
こうしている間にも今回の滞在の時間は消化していっているわけで、
確実に死へと進んでいるサケたちの様子を見ていると
2度と取り返せない彼らの今を記録する事を思い、
「この場所で撮影している事が、はたして今の正解なのだろうか?
他の何か方法があるのではないか?」
とわかっているのに自問してしまいます。
正解はありません。
初めてアラスカに来てから、ずっと自然をみながら
こうやってやって来ました。
「他の事を考えるより、今、目の前にある物語を」
今日も潜ってきます
途中経過
物資の補給とドライスーツの修理の為に
アンカレジに戻ってきました。
まずは近況。
・車を買いました。
ついに一番の予算のネックになっていた車を買いました。
1993年ニッサン QUEST というバンです。
17万マイルを走ったなかなかの走行距離をもつ車ですが、
エンジンの状態も良く、なかなか快調です。
今のところ特に目立った故障もなく、どうやら当たりのようです。
これで、雨に降られてもテントを片づける手間から解放され、
夜遅くに移動しても、適当に停めて眠る事が出来ます。
何か愛称をつけたいけれど、ひとまずはこの全オーナーのTEXASの
ライセンスプレートからALASKAにつけかえてやりたいと思います。
・撮影開始
前の日記でも書いたように、南下して
いつもの撮影ポイントをチェックしましたが
今年は特に魚の数が少ない年のようです。
また、今年から水中の撮影にチャレンジすることにしたので、
いままで撮影していた場所が水中で必要な条件を満たしていない事が
多く、そのためまた情報の集め直しになってしまい、手間取ってしまった。
毎年撮影の条件が違う事に苦心しているけれど、
これで、次の2週間の撮影するポイントは決まりました。
あとは、流れていく時間に身を委ね、サケたちの産卵をフォローして
「作品」を作り出したいと思います。
じっと冷たい川に身を浸して、サケたちの行動を観察しているのは
体力的に厳しく、初めてのカメラを扱う技術的に難しいけれども
毎日何かの新しい発見があって、それに対しての
一つ一つの工夫が何かの気づきの元になっています。
とりあえず、中古で買ったドライスーツの手首の部分が
ゴムの劣化によって浸水し始め、何とか騙し騙し使ってきたけれど、
どうにもならなくなってきたので、今回アンカレジに修理するために戻ってきました。
修理完了は明日の昼。
それまでは、久しぶりの都会を満喫していこうと思います。
帰るとサケたちが冷たい川で待っています。
その川の冷たさは苦行のよう。
そして、見つめる彼らは生と死の営み。
まるで何かの修行のような毎日です。
南下開始
アンカレジでの物資調達を終え、いよいよ南下開始。
明日から撮影に突入します。
とは、言っても鮭が相手のこの商売。
Fish&Gameのカウントデータを毎日チェックしていても、
彼らがいつ頃目の前を遡上していくのかは全く予想が付かない。
数百キロも離れた先の通過データがあっても
彼らの行動は天候や様々な条件に左右されて、
一点で待ち続ける僕の目の前をいつ通り過ぎるかは
それこそ結果が出てみないと判らないような状態だ。
ここからはひたすら待ちの時間を耐えるしかない。
まずは明日、いつもの撮影ポイントに彼らがいるかどうか。
そこから、そのまま撮影に突入するか、
それとも、友達の家に顔をだして、再会を楽しむか
そこがまずは最初のポイントになります。
まだ、機材の準備も完了していないけれど、
とりあえずはフィールドの状況を確かめたい。
今年は例年にないくらい天気が悪く、寒い年。
さて、どうなることやら。
無事到着
成田ーシアトルーアンカレジ
長旅でしたが、無事つきました。
久しぶりに着いたアラスカはからっとしていて、
過ごしやすい湿度で、出迎えてくれました。
飛行機の機内で準備の疲れか、ヨメがちょっと体調を崩していて、
ゆっくり眠っていますが、今のところ大丈夫のようです。
空港からレンタカーを借りて、友人宅に泊めてもらっています。
これから買い出しと荷物の準備に走り回る事になりそうですが、
地図をいらないくらい、いままで走り回ってきた
アンカレジの町で車を運転していると、
再び自分の夢に戻ってきた事が実感できてとても
嬉しくてたまりません。
さて、どんな旅がはじまるだろう!