まるで、遠き昔のように

今日は妙な日だった。
普段、あまり昔を振り返ったりする事はないのだけれど
ふと昔の事を思い出し、自分のいるこの今という時間を
感じる事があった。
仕事が一段落して、小腹がすいたので
ちょっとマクドナルドに立ち寄って
夕食のような、つまみ食いのような食事をとった。
同僚と店内で席につき、おたがい窓の外を見ながら
もそもそとハンバーガーを食べた。
向かい合っている席にもかかわらず、言葉を交わすわけでもなく
もくもくと外を眺めながら食べた。
しかし、それは重苦しい雰囲気ではなく
お互いにとって交わす言葉を必要としない、静かな食事だった。
きっと二人とも外の世界をみながら全く別々の事を
頭の中に巡らせていた。
いつもなら気にもならないのだが、ぼんやりとしていたせいか、
楽しそうに話す別の席に座ったカップルの会話の声が耳に入った。
何を話しているのかまでは判らなかったが、
会話のテンポの様子から彼が会話の中にしきりに
冗談を言って、それに彼女が楽しそうに笑っているようだった。
その様子は二人とも本当に楽しそうだった。
特に彼女の楽しそうに笑う様子が印象に残った。
ただ、その時ふと自分の事を思い出した。
「そういえば、あんなことが自分にもあったな。」
お金もなかったし(それは今もだけど・・・)、本当に若かった。
ああやって、マクドナルドに寄って本当に楽しそうに
女の子を笑わせたことがあったなあと思った。
いままで、そんな事を思い出したこともなかったけど、
何故かふと思いだした。
するとある事がすぐに浮かんだ。
「きっと今の自分にはあの時の自分と同じ事はできないな」
あれから、いろんな事が経験を積んでうまく出来るようになったかも
知れないけど、こんな風に本当に楽しそうにマクドナルドにいて、
女の子を笑わすことはもう今はできないなと。
不思議と悲しくはなかった。感傷にひたる訳でもなく
ただ今の自分の立っている場所がはっきりと見えただけだった。
まさかマクドナルドでつまみ食いをするために立ち寄って、
こんな事に気が付くとは思わなかったけれど。
おまけでもう一つ
何とも不思議な事があった。
結構長い距離をバスで
ずっと運転手と僕だけの二人きりの貸し切りバスだった。

人気のない場所だったら珍しくもないけど、交通量の多い道路を通る
路線だったので、外はにぎやかなのにバスの中はエンジン音と
運転手の安全確認の点呼とアナウンスだけだった。
二人きりのバスでずっと誰も降りず、誰も乗らない。
運転手の仕事がどんな物なのかじっくり観察できた。
しかし、なんとも奇妙な感じでいっぱいだった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする