アラスカの秋もいよいよ深まり、
冬を目前に控えた物寂しい風が吹いています。
撮影に対する自分のリズムも、夏のエネルギッシュなリズムでは
捉えきれない秋の静かなテンポを前に、少しずつ
スローにシフトしています。
山の頂上がパウダーシュガーを振りまいたように
白く色を変え、黄葉の色の山肌と共存している。
まるで、その様子は秋と冬が同居している今の季節を表している
ようだ。
これからの季節に備えてレンタカーをアップグレードした。
寒さに備えてもあるが、何より夜露に濡れたテントをたたむ手間も省けるし、
悪天候でも料理をする事が出来る。
これはピックアップトラックにキャンピングカーのようなユニットを
積んだ物で、こちらの動物写真家がよく使っている。
中にはベッドルーム・キッチン・シャワー・トイレ・冷蔵庫が
コンパクトに収納されている。
およそ野外で望める限りの快適さがこのキャンパーには積み込まれている。
この快適な環境は肉体的ストレスをかなり軽減してくれる。
しかし、被写体が動物である以上、毎日テントに泊まっていた日々は
ある意味で動物の生活に近かった。
季節の微妙な変化や太陽の移り変わりを感じる事が出来た。
肉体的なストレスの軽減と感覚の鈍化。
どちらが大きく撮影を左右するのか?
写真にはその人があらわれるとよく言われる。
その言葉には嘘はないと思うが、
その写真を撮った人の人間性はあらわれない。
その写真を撮った人の被写体に対するその人の感性が
表現されるだけだと最近、感じるようになった。
快適な生活が自分の写真に何をもたらすのか。
でも心配はいらないかもしれない。
借りる時に念を押された。
「水が凍るかもしれないけど大丈夫?」
快適なのは今だけなのかもしれない。
月: 2006年9月
インスパイア!!
inspire
1 〈人を〉奮い立たせる;〈人を〉刺激して(…する)気にさせる((to do));〈人を〉促して(…を)する気にさせる((to …))
“Yahoo!辞書より”
やはりクマですか?
木彫りといえば。
やはり木彫りですか?
クマといえば。
これはもはやお土産業界の常識なのでしょうか?
インターナショナルな”月刊お土産”とかいう名前の雑誌があるのでしょうか?
そこでクマの木彫りが紹介されたとか?
まさかアラスカに来てまで木彫りのクマを見るとは思わなかった。
このまま行くと将棋の王将のコマが登場するのも時間の問題か!?
ちなみに機材にカモフラのテープを巻いてみました。
追加で頼んでおいたフィルムが40本届きました。
フィルムが足りない事はいい事です。
・・・・たぶんね。
さーて、残り1ヶ月アラスカの短い秋に全力で挑みます!
Denali National Park
デナリ国立公園に撮影に行って来ました。
この国立公園は近年人気が鰻登りに上昇し、
デナリ山(マッキンレー)の見える
キャンプグラウンド・ワンダーレイクは特に人気が高く、
事前の予約が必ず必要なほどとても人気があります。
今回は誘ってくれた友人のおかけで4泊5日の日程で
このキャンプグラウンドに滞在しました。
今回の撮影目的はムースとマッキンレーの風景の二つ。
ただし、どちらも天候次第なので特に天気の変わりやすい
このエリアでは運がかなりの割合を握っている事になります。
どの場所でもきっちり時間をかけて撮っていくのが
僕のスタイルなので、今回の予定は5日間ほどしか
滞在できない上、運にかなり左右される場所なので、
まあ、のんびりとアラスカを楽しもうと。
いつもはどちらかというと、ストイックな事が多いのですが、
たまには写真を第一優先事項から、第二優先事項に
移して楽しむ事にしました。
とりあえず、今回のデナリ国立公園は公園の中心部に一般車の乗り入れが
規制されているので、以前借りていた車から、
コストの安い車に切り替え、公園の入り口に駐車しておく事に
しました。上の写真の車になりました。
「金」
そう、これはシャンパンゴールドなんていう
おしゃれな名前ではなく、金・もしくはゴールドです。
しかし、見た目とは裏腹にエンジンの調子はよく
ぐいぐいとはしります。
そこで、この車に日本人として、
「金閣寺 Kinkakuji」
とよぶことにしました。
「リッチな日本人が選ぶ車はゴールドじゃないとね」
「レンタカーを塗り直してやったよ」
とか友人にはジョークのネタになりました。
※今回の撮影にはデジカメを持っていかなかったので、
公園内での写真はありません。
ただし、傑作が撮れました!!
ビジターセンターの展示物ですが・・・・・・・
撮影は5日間天気に恵まれ、良い写真も幾つか撮れました。
毎日カメラを背負ってツンドラの丘を越え、池を回って
デナリを見上げながら動物を探しました。
夜空にオーロラを見上げ、月明かりに浮かび上がる
デナリ山を眺めました。
オーロラの写真は現れた時間が短かったので、
撮れませんでしたが・・・・
写真がないのが申し訳ないのですが、
今回のデナリ撮影行は大成功でした。
では最後に公園入口の黄葉写真を。
アラスカは秋です。
飛べない豚は・・・
「飛んできます!」
と言ったまま、何も更新しないとまるで、行方不明になったかのようですが、
無事帰ってきました。
予定していた日は悪天候のため、次の日に順延になりました。
翌日は朝は曇りだったものの、無事昼頃から太陽が雲間からのぞくと、
アラスカの強烈な光が差し込んだ。
アンカレジのメリルフィールド空港(民間専門の空港)で
4人乗りセスナをレンタルし、いざ出発。
ちなみに出発前に使うレンズとカメラ、そして
フィルムを持って、ウェイトを計ってみると、
なんと210ポンドもありました。これはまあ、
僕が重いのもありますが、普段腰痛に悩まされている理由も、
実は持っているカメラ機材がかなり重いのも、
原因の一つなんだなと実感しました。
(飛行機から撮るので、三脚と持参しないレンズの分は含んでいないので、
普段はもっと重い。)
アラスカはタクシー感覚で飛行機を使います。
でも、それに対して日本人の僕の感覚では飛行機はただ、移動手段であって
どちらかというとあまり人がそれに関わっている感覚がない。
「飛行機はたまに落ちるけど、とにかく乗れば無事目的地まで
運んでくれる。」
と、理解していたけど今回小型のセスナに乗った事で、
人が飛行機を操縦して、空を飛ぶという事が
非常によくわかった。
機長自ら、滑走路にアプローチです。
アンカレジを離れ、南に向かって出発です。
今回の目的はいつも撮影しているキーナイの川に集まるサーモンを
空から撮影する事。
いざセスナに乗ってみると、いかにもプカプカと浮いているようで頼りない。
4人乗りの狭い空間がまるで空から糸でつられているかのように
ちょっとした風や微妙な操作に敏感に反応する。
大きなジャンボに乗っていると判らない事だけれど、
やはり飛行機は空を飛んでいるのだ。
やがて、飛んでいる感覚になれてくると
アラスカの広大な景色がパノラマとなって眼前に広がっている。
空からの視点。
今までの自分では見る事が出来なかった世界。
圧倒的に自分の目の前に存在するアラスカの景色。
期待通りの存在感で自分を圧倒するのだが、
そこから感じ取れる満足感とは別にもう一つの
疑問のような感覚が自分の中に浮かんできた。
「自分が普段追いかけている生物の世界をミクロとすると
今自分の目の前にマクロの世界が広がっていて、
このマクロの世界には無数のミクロの命が存在している」
この感覚を表現しようと飛行機からの空撮という手段を選んだものの、
自分の中に今まで蓄積してきた「生物を観察してきた時間」から感じ取った
感覚と今眼前に広がる景色から感じる感覚がリンクしない。
その疑問を抱えたまま飛行機はいつものフィールドの上空に到着。
上空を旋回しながら、撮影を開始した。
思い描いていた通り、河口部分にサーモンがたまり
ターコイズブルーの川に見事なコントラストを描いている。
ねらったポイントの上空を猛スピードで通過する。
「空撮の場合、押し寄せる状況が目の前にただひたすら展開し、
その状況に押し流されることなく冷静に状況に合わせてシャッター
を切り続けなくてはならない」
事前にもらったアドバイスをまさに痛感した。
窓を開け、逆風の中自分の全体重でカメラをとばされないようにしっかりと
カメラをホールドしながら、ズームレンズで正確にフレーミングして
マニュアルでピンを合わせる。
そして一度の通過に合わせて、フィルムの残数を考える。
撮りすぎても上空を通過し終わる前にフィルムが終わってしまう。
かといって、フィルムをセーブしていると思わず一瞬の反応に
遅れてしまい、撮り逃がす。
自分の未経験の世界が駆け抜けていったが、
結局最後まで自分の感覚とリンクできぬままだった。
初めての経験としてたくさんの収穫があった。
今回得た経験は次回への忠告として
しっかりと持ち帰りたいと思っている。
そして何より貴重なチャンスを与えてくれた
友人に感謝したい。
「飛べない豚はただの豚だ」
有名なセリフを飛行中に言おうと用意したのだけれど、
撮影中はとてもそんな余裕がなく、
また撮影後も必死にズームアップ、ズームアウトを
繰り返しながらマニュアルでピンを合わせていたおかげで
飛行機に酔ってしまい、帰着する寸前にやっと
思い出して言うのが精一杯でした。