さて、ただいま戻りました。
9日間の撮影でしたが、やはり最初の水中撮影ということで、
3年間使ってなかった、機材はやはりいろいろトラブルを
起こしてくれました。
撮影自体は順調に進んでいたのですが、
ドライスーツのゴムの部分が、経年劣化から裂けてしまい、
ちょうど、ほかの場所の様子も気になっていたことから、
一度、ベースにしている友達のキャンプグラウンドに戻ってきました。
で、前の日記を見ているとバタバタと出かけていったことがわかるのみで、
どこに行って何をしたのかもよくわからない、困った日記になっていますが。
えーと、今回は前回湖に誘ってくれた友達の紹介で、前に行った湖のちょっと南に
ある、孵化場に滞在して鮭の撮影をしてきました。
入り江に遡上してくるカラフトマスを目当てです。
森の様子と、サケを順調に撮影しちょうど用意してきた食料が減ってきたのと
前述のドライスーツのメンテナンスのために、
船で戻ってくることにしました。
5人の現地クルーとも仲良くなり、
後ろ髪は引かれる思いはありましたが、水温8度という厳しい冷たさに
別れを告げられるうれしさもあり、荷物をまとめ、
船で送ってもらうためにスタッフが来るのを
まっていました。
今回の撮影は、偶然大潮に重なっていて、
そのおかげで干潮時に非常に興味深いサケの生態を
見ることができ、その環境の様子を写真に納めることができました。
ちょうど、海辺の入り江になっていた場所に滞在していたので、
海から川へと入るサケの様子と、潮の満ち引きに
移り変わる森と入り江の景色は新鮮で飽きることがなく、
いいインスピレーションをもらいながらコンディションを
維持しつつ撮影しました。
入り江の潮の満ち引きによっては、
ボートまで施設から森を抜けて片道20分ほど
歩かなければならない環境で、
今回の撤収には一人で80キロ近い全部で4個の
荷物をボートのある入り江まで運びました。
荷物を運んでから20分ほどまっても
船頭が来ない・・・・。
しょうがないので、迎えにもどり
そこで、今回の船頭の友達がくたびれて
昼寝をしているのに遭遇。
普段なら、冗談で起こすところですが、
激務で疲労している所を察し、
そのままにしておきました。
すると、「もしかしたら、今日いけないかもー。」
なんて、言い出しました。
おいおい。
そりゃないぜ、またあれを一人ではこぶのかい?
と、思いせめて
「じゃあ、荷物は運んだから後で、ボートを出して回収してくれる?」
と聞き、
「OK」
ということになりました。
やれやれ、一日延びちゃったなと思い、
建物の外でたむろしていたスタッフと
話し込んでいると、
40分ほどしてから、
その友達がゆっくりと起きだして出てくると、
「そういえば、そろそろ満潮だけど、荷物は大丈夫なのか?」
「一応、考えて森からの階段の下においてきたけど・・・・・」
「はしごの下なら大丈夫だと思うけど、もうとってきた方が良いな」
ということになり、ほかのスタッフと取りに行くことになりました。
しかし、みんな忘れていたのです。(僕も含めて)
大潮を。
言葉もない
とは、このこと。
着いたときには時すでに遅く、
4個の荷物はすべて海面を漂い、
真っ先にカメラバックを開けましたが、手遅れ。
完全に半分の高さまですべての機材が水につかり、
すべてを失いました。
それには、今回の1週間に撮影できたデータも全て含まれています。
機材が回復可能かどうかは今日、これから日本に全ての機材を
送って見ないことにはわからない、再起不能の状態に陥りました。
まあ、元気がないのは当たり前ですが、結構落ち込みました。
その事故から2日後の今日、この日記を書いています。
さあ、撮影機材のない写真家となってしまいましたが、
ここからこの旅はどんな展開をするのか?
ぐずぐずと、「撤退」の文字も浮かびましたが、
奥様から、
「やれることをやらなければならない。なぜならあなたはまだ、アラスカにいるのだから」
と尻をたたかれました。
こてんぱんにやられたけれど、でも負けない。
負けを認め下を向く前に、できることを探し、
必死に食い下がる。
これこそまさに俺のしつこさが生かされる状況ではないですか。
ねえ、みなさん。
へこんでいる暇はない。
ちなみに、このことをアラスカの友達に話すと
「過去なんて振り返る必要はないの、前だけをみて進んでいくの、いい?」
なんて一蹴されました。
「でも、道具を壊してばっかりいるような気がして・・・・」と弱気に言うと、
「あら、うちの旦那なんてしょっちゅうよ。」
・・・・・・・・・確かに。
もちろん大変なことになったわね。と一言察してくれましたが、
そのままの自分でいられるアラスカの友達にも感謝して、
今日もそのまま書いてみました。
(写真は友達の家に飾ってある、僕の作品)